3. システム設計の詳細

システム設計プロセスは、要件定義で確定した機能や非機能要件を、具体的なシステムアーキテクチャや詳細設計に落とし込む段階です。以下に、システム設計プロセスの詳細な手順を説明します。

1. アーキテクチャ設計(基本設計)

  • システムアーキテクチャの定義:

    • システム全体の構成要素(アプリケーション、データベース、インフラなど)を定義し、どのように連携するかを設計します。

    • アーキテクチャスタイル(レイヤードアーキテクチャ、マイクロサービス、イベント駆動など)を選定し、その理由を明確にします。

    • 技術スタック(プログラミング言語、フレームワーク、データベース管理システム、クラウドサービスなど)を選定します。

  • コンポーネント設計:

    • システムを機能別にモジュール化し、各コンポーネントの役割と責任範囲を定義します。

    • 各コンポーネント間のインターフェースや依存関係を明確にします。

  • 非機能要件の設計:

    • 性能要件、スケーラビリティ、信頼性、セキュリティ要件などを基に、システム設計を行います。

    • 例:負荷分散の設計、冗長構成、バックアップの設計、ログ管理の方法など。

  • データフローと制御フローの設計:

    • システム内でデータがどのように流れるか、データフロー図(DFD)を用いて視覚的に表現します。

    • 制御フローは、システム内のプロセスや機能の実行順序を表すフローチャートやステートマシン図を使って設計します。

  • システム構成図の作成:

    • ネットワーク構成やサーバー、ストレージ、ネットワーク機器の配置を図示し、全体の構成を明確にします。

2. データ設計

  • 概念データモデルの作成(ER図):

    • 業務に必要なデータを抽出し、エンティティ(実体)とその属性、エンティティ間の関係を定義します。

    • ER図を用いてデータモデルを視覚化し、ビジネス要件を反映したモデルであることを確認します。

  • 論理データモデルの作成:

    • 概念データモデルを基に、データベース内でのデータ構造を設計します。テーブル、カラム、データ型、主キー、外部キー、正規化などを考慮します。

    • データの正規化を行い、データの冗長性を最小限に抑えます。

  • 物理データモデルの作成:

    • 論理データモデルを基に、実際に使用するDBMS(データベース管理システム)に合わせて物理的なデータベース設計を行います。

    • インデックス、パーティショニング、アクセス速度の向上を考慮したストレージ構成を設計します。

3. 詳細設計(ロジカルデザイン)

  • クラス設計:

    • オブジェクト指向の手法を用いて、システムの各機能をクラスとして設計します。

    • クラスの属性(メンバ変数)、メソッド、クラス間の関係(継承、実装、関連など)を定義します。

  • インターフェース設計:

    • モジュール間やコンポーネント間でのデータのやり取りを定義します。

    • API(アプリケーションプログラミングインターフェース)の仕様書を作成し、メソッドの入力と出力、エラーハンドリング、セキュリティ要件を明記します。

  • 画面設計(UI/UX設計):

    • 各画面のレイアウト、ユーザーインターフェース(UI)、ユーザーエクスペリエンス(UX)を設計します。

    • ワイヤーフレームやモックアップを用いて、画面遷移やユーザーの操作フローを具体化します。

    • 使いやすさや視覚的なデザインを考慮し、ユーザーの操作性を高めます。

  • 業務ロジックの設計:

    • 各業務機能の詳細な処理手順を設計します。

    • 業務ルールやビジネスロジックをフローチャートやアクティビティ図を用いて表現し、開発者が理解しやすいようにします。

  • バッチ設計:

    • 定期的に実行するバックグラウンド処理(バッチ処理)の設計を行います。

    • 実行スケジュール、入力データ、出力データ、エラーハンドリングなどを詳細に設計します。

4. セキュリティ設計

  • 認証と認可の設計:

    • システムにアクセスするユーザーの認証方法(ID/パスワード、OAuth、SAMLなど)を設計します。

    • 各ユーザーがシステム内でどの機能やデータにアクセスできるかを定義し、アクセス制御の設計を行います。

  • データセキュリティ設計:

    • データの暗号化(トランザクション中、保存中)、データのマスキングや匿名化を設計します。

    • データベースのアクセス権限や、ログ監査の方法を定義します。

  • 通信のセキュリティ設計:

    • システム間の通信が安全に行われるよう、HTTPSやVPN、ファイアウォールの設定などを設計します。

5. インフラ設計

  • サーバー構成の設計:

    • アプリケーションサーバー、データベースサーバー、Webサーバー、ロードバランサーなどの構成を設計し、各サーバーの役割を定義します。

    • スケーラビリティを考慮し、水平分散、垂直分散の設計を行います。

  • ネットワーク設計:

    • 各コンポーネント間のネットワーク構成を設計し、必要な帯域幅、セグメント、サブネット、ファイアウォールルールを定義します。

    • 外部アクセスや内部ネットワークとの接続を含む通信経路を明確にします。

  • バックアップ設計:

    • データのバックアップ方法、バックアップの保存先、復旧手順を設計します。

    • 災害対策(DR:ディザスタリカバリ)を含め、システム障害時の復旧手順を定義します。

6. テスト設計

  • ユニットテスト設計:

    • 各機能やクラス、モジュール単位でのテストケースを設計します。全てのパス、境界条件を考慮し、可能な限り網羅的なテストを設計します。

  • 結合テスト設計:

    • モジュールやコンポーネント間の連携を検証するためのテストケースを設計します。特にインターフェースやデータの受け渡しに注力します。

  • システムテスト設計:

    • システム全体が要件を満たしているかを検証するテストケースを設計します。性能テスト、負荷テスト、セキュリティテストなどを含めます。

  • ユーザ受け入れテスト(UAT)設計:

    • ユーザーが実際にシステムを操作し、要件通りに機能するかを確認するためのテストケースを設計します。

7. 設計レビューと承認

  • 設計ドキュメントのレビュー:

    • 作成した設計書を関係者でレビューし、要件定義と矛盾や漏れがないかを確認します。

  • 設計の承認:

    • レビューの結果を反映した設計書を、正式に承認し、開発フェーズに進む準備を行います。

このプロセスを通じて、システムの全体像と詳細な設計が明確化され、開発フェーズにおける手戻りを最小限に抑えることができます。